学長コラム
【第80回】理想の学校給食
「食育」に関連して、皆さんに読んでほしい本を紹介します。
藤原辰司(フジハラタツシ)の「給食の歴史」(岩波新書)です。
学校給食は「欠食の補食」に始まり、「窓際のトットちゃん」に描かれているような
「栄養の補給」、「安全・衛生」「共食」など、いろいろな役割を果たしつつ現在に至りました。
これからは「食文化」の学びで、この本にはその真髄が書かれています。
給食は配給
「給食」という呼称は、学校給食・病院給食と一定の規格のものを配給するイメ-ジで、
英語では軍隊の「携帯糧食セット」“Ration”が該当すると思います。
アメリカでは学校給食を“Ration”とはいわず、“ School Lunch” が 一般的のようです。
この呼び方一つで「食文化」を目指すかどうかも違ってきます。
日本一おいしい「京都府伊根町の給食」
藤原さんの本の冒頭部分で紹介されている「伊根町の学校給食」について、
その特徴、ポイントを要約してみました。
①ランチルームには、町の名勝「布引の滝」からとった「レストランぬのびき」の名前がついている。
②(センターではなく)自校調理の方式である。
③2015年4月からは、無償化された。
④素材調達は、極力「地産地消」で行う。
ある日の献立は、 調理員宅で穫れたサツマイモ、地域産のコシヒカリ、伊根漁港直送のサワラ、
出汁は伊根の煮干し、地元産野菜を用いた料理だった。
⑤メニューはホワイトボードに書いてあり、生産者の名前が記されている。
⑥給食当番の児童が献立を説明し、さらに栄養教諭がより詳しく説明する。
⑦みんなで一緒に食べた後、調理員に感想を伝える。
⑧夏休みなどを利用して、農家を訪ね、畑も見学する。
食文化を学ぶ、フードチェーンを学ぶ時代
どうでしょうか。ほぼ理想に近い学校給食で、一般的イメ-ジと大きな差があり、
立派な「食文化」になっています。
あえて注文するとすれば、調理そのものへ児童も参加してほしいところです。
高知県の「南国小学校」の給食では、自動炊飯器とタイマーを使い、
児童がクラスごとに自分たちでご飯を炊いています。
本当はおコメを研ぐところからやってほしいくらいですが、
無洗米が普及した現在、「児童」炊飯は簡単なことです。
給食は工夫次第で、食育・食文化の高いレベルに近づけます。
CSA(Community Supported Agriculture)
農場‐食卓‐農場は、フードチェーンで切り離せない、地域社会が農業を支える、欧米ではそういわれます。
学校給食も同じなのです。
そろそろよい名前に転換して、地域社会と食生活が高い食文化で連携を深めたいものですね。