学長コラム
【第86回】畠と畑、「焼き畑」
とかく誤解の多い焼畑農法について話します。
- 村上・山北の名産「赤かぶ」と焼き畑
村上市などのHPを見ると、『山北地区の焼畑農法は、林業と結びついて、
環境調和・自然循環に役立つ農法=灰の文化であること、
焼畑農法で生産される「赤かぶ・赤かぶ漬」は、
栄養豊かで味がよいと評判』という紹介があります。(さんぽく生業の里)
また、小学5年生が、総合学習で体験した記事もあります。
村上は<鮭と酒>だけではなく、焼畑農林業・農山村の景観も、地域の宝物といえます。
なお、赤かぶは、山形県鶴岡市 温海町のものと種類が同じ「温海かぶ」で、
1950年代の杉の人工林伐採跡地で、この焼畑農法が始まりました。
- 網野善彦
ここでちょっと、高等学校時代の恩師で歴史学者「網野善彦」の話をします。
先生は、講演のなかで、
<「ハタ地」は「畠」(ハタ)といい、中世では、
火偏の「ハタ」=「畑」は<焼き畑>のことです。
普通は、「畠」という字を使います。
また、焼き畑ではない「ハタ地」は、「常畠」(じょうばた)ともいう>と話されています。
- 「農業と経済」- 農村文化の新潮流
昭和堂(書店)が発刊している「農業と経済」(6月号)では、
「現代によみがえる焼畑(山村と都市をつなぐ地域文化)」を特集していました。
そこでは、環境破壊の元凶と見なされがちな「焼畑」が、
実は<世界各地で行なわれている研究からは、
伝統的で小規模な焼畑は環境破壊であるどころか、
持続的な環境利用システムであることが明らかになってきている>と説明しています。
また、そこに、多くの事例とともに紹介されているのが、
村上市・山北(さんぽく)の「赤かぶ・焼畑栽培」でした。
少々かたい本ですが、興味のある方々には、ぜひ、一読をお勧めします。
- 内容のポイント
1.熱帯地域での「商業プランテーション造成」のような開発のために森林を耕地化する
森林焼き払いと「焼畑」が同一視されがちである。
2.焼畑の定義とは、「ある土地の現存植生を伐採・焼却等の方法を用いることによって整地し、
作物栽培を短期間おこなった後放棄し、自然の遷移によりその土地を回復させる休閑期間を
経て再度利用する、循環的な農法」である。
3.休閑期間に発生が促される山菜類を初めとする山の恵みが、ユニークな食文化を育んできた。
4.焼畑は縄文時代から行われてきた。水田農業と共存しながら続いている。(学長コラム第73回参照)
5.焼畑には、伝統継承型、ブランド作物型、むらおこし・観光型、環境再生・林相転換型、
農林業複合型、大学研究型などのタイプがある。
6.地域としては、山形、新潟、福井、滋賀、静岡、島根、高知、宮崎、熊本の多岐にわたっている。
若草山焼きや阿蘇の野焼きのように、地域文化が資源になり、都市と農山村をつなぐこともできます。