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【第104回】食育基本計画の公表

第4次の食育基本計画(2021~2025年)が公表されました。
そのポイントは、
①生涯を通じた心身の健康を支える食育(国民の健康)
②持続可能な食を支える食育(社会・環境・文化)
③「新たな日常」やデジタル化に対応した食育(①&②の横断)です。

BSE事件を契機に、「食」について理念・方向を合意・共有しようとする制度として「食育基本法」が生まれ、5年ごとに基本計画を策定することになっています。

今回の基本計画の「推進内容」のなかに家庭育、学校育、地域育という言葉が登場しますが、これは2004年ごろに私が初めて使ったものです。
当時の思いはいまも変わらないので、「農林水産省のメール・マガジン」に掲載された文章を以下に紹介することにします。

 

家庭育、学校育、地域育

長い歴史と多様な地理的条件の下で豊富な食材に恵まれたわが国だが、そこでの「食事」には、単なる栄養補給にとどまらず、生産から、加工、調理のプロセス、家庭やレストランでの雰囲気などに至るまでの「食文化」それ自体を楽しみ、守り、伝えていくことまでが含まれている。
そして、それが実現されるためには、家庭育、学校育、地域育の三点セットが不可欠である。

 

食事が楽しいと思うとき

農林水産省がホームぺージで行った小中学生のインターネットアンケートに興味深い結果が出ている。
まず、「食事が楽しいと思うとき」に対しては、好きなメニュー、誕生祝いの行事、家族のだんらん、調理への参加などがそれぞれ高い回答を示していて予想どおり。
他方、「食事が楽しくないと思うとき」に対しては、「嫌いなおかず」と並んで、「ご飯の前に怒られたとき」が圧倒的な回答数を示している。

この結果を見ると、「食育」では、確かに<食べ物が真ん中>に置かれるのだが、その周辺の多くのこと、例えば、田植えや稲刈りなどの農作業体験、餅つきへの参加、地域のお祭りで味わう伝統食の楽しみ、家庭や学校における食事の際の雰囲気、お箸や茶わん、お皿などの心温い「うつわ」に触れることなどが対象となり、その全部の過程への気配りがなされている必要があるし、また、それらを大切にしなければならない。

 

転換期にある学校給食

ひるがえって、「学校給食」も、そろそろ、かつての補食、栄養補給、完全な衛生第一、センター調理集中主義から、食文化、食育を目標とするところへと飛躍すべき時期に来たのではないか。

高知県南国市で行われているように、地域の棚田のお米を児童が家庭用炊飯器で自ら各教室で炊く、生産者の顔が見える地元産の野菜を利用する、岩手県大野村で行われていたお父さんたち手作りの木製の食器で食べ、地域文化、食文化を味わう。
また、千葉県白井市の教育委員会が導入を決めたと報じられる「休校日の柔軟な取扱い」も実現すれば、大変うれしい。
村の行事が平日に行われても子どもたちが祭などに参加でき、地域の伝統的食文化にじかに触れることができる。

南国市教育長が「前例は自分たちがつくる」との見解を示していたが、これは全面的に支持できる。

 

(注)【第80回】理想の学校給食もぜひご覧ください。


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