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【第106回】雪国のくらし―北越雪譜から その3 越後縮

●越後縮(えちごちぢみ)

第98回で「越後縮」と「へぎそば」の共通点を話し、名産のそばのつなぎは、越後縮の「ヨリ」に使う海藻の「ふのり」と述べた。
苧麻(ちょま)から表皮を除いて、繊維を取り出す。(青苧・あおそ)
繊維を糊づけして、枠に巻く(ヨリ)→機織り→糊落し→雪さらし、ざっとそのような工程をたどる。

 

越後縮
縮は越後の名産にして、他国の人は「越後一国・越後ではどこでも」と思うだろうが、「魚沼郡一郡に限った産物」である。
越後の他の地域に多少はあっても、その品位は、魚沼に及ぶものではない。

 

種類
「白縮」は堀内、浦佐、小出嶋、「模様・絣(かすり)」は塩沢、「藍縞(あいじま)」は六日町、「紅桔梗縞(べにききょうしま)」は小千谷、また、「浅黄縞(あさぎじま)」は十日町、「紺・弁慶縞」は高柳が一番だ。

 

苧(麻)
奥州、会津、出羽、最上がよい。
なかでも「白縮」は会津、また、米沢の「選り苧」も上品である。

 

縮を曝す(さらす)
「晒屋(さらしや)」といって、これ専門の業者がほどよい場所を見つけて仮小屋を建て、正月から2月いっぱい雪さらしをする。
このころは、田も畑も一面の雪である。
灰汁(あく)に浸してさらす作業を毎日繰り返す。
朝日があかあかと昇って、水晶のような白布に紅色が映える様は、どんなものにも例えられない。

 


●鮭の始終(はじめ・をはり)

鮭の食用
生にて食するは、魚軒(さしみ)、膾(なます)、鮓(すし)である。
煮るも焼くも、その料理にて、なおよろしい。
塩漬けにしたるは塩引または干鮭という。

 

鮭を出すところ
東北の大河のうち海に通じるところに、必ず鮭がある。
松前・蝦夷地(北海道)が、最も多い。
塩引として諸国に商うのは、ここに限る。次が、越後である。
信濃、越中、出羽、陸奥、常陸は、とれるのだが、その地域で食するのみであり、通商には足らない。
古志(越)の長岡魚沼の川口あたりで漁した一番の初鮭は、長岡(のお殿様)にたてまつれば、鮭一頭に米7俵の値を賜るという貴重なものだ。

 

鮭の始終(はじめ・をはり)
わが国の鮭は、初秋より北海を出て千曲川と阿加川(阿賀野川)の両大河に遡る。
子を産まんと、50余里(200km)、川にあること5か月余りである。
産み終わるまでの困苦のために、尾鰭(おびれ)は損なわれ、身は痩せ疲れて、流れに従って深い淵のあるところに至ってしまう。
牧之(筆者)は常に思うのだが、寒期のころに魚卵と白子を混ぜて(交配し)鮭が住む川の小石地帯に養生し、包んで瓶のようなものに入れて、鮭がいない国の川の清流に移す。
3年ぐらい禁漁とすれば、そこでも、鮭がとれるようになるのではないだろうか。

 

(次回は、その4 雪国の行事とあそび)


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