学長コラム
【第174回】給食の記事 ‐ あれこれ
給食については、これまでも学長コラムで何回か取り上げてきた。
【第8回①・第8回②】食べ物で体をつくり食べ方でこころをつくる、【第80回】理想の学校給食、【第104回】食育基本計画の公表、【第131回】食事と食器、番外編では、「地域の食材を学校給食へ」、「食育と学校給食の進化」などである。
本号では、コラムに取り上げることができなかった給食関連の記事をポイントのみの要約ではあるが、ご覧いただこう。
奈良時代の給食メニュー復元
奈良時代に国の役所が提供した給食のメニューを、正倉院文書を基に復元しようという試みが進んでいる。
文書(もんじょ)には、写経で働いていた写経生等75人分の給食を「膳部」(かしわで)の調理人2人がまとめて調理する際に支給される食材の品目と量が細かく記されている。
「米」「糯米(もちの米)」「塩」「酢」「あらめ」「ふのり」「からし」「大豆」「小豆」「胡麻油」という具合だ。
道具類も記されているので、そこからどのように調理したかを推測できるそうだ。(産経新聞)
奥深い学校給食探訪
400校を訪ねているが、それぞれ地域で多彩な季節や郷土の味に調理員らが創意工夫を凝らしている。
三重県伊賀市内の小学校では、冬になると温かい牛乳か冷たい牛乳かを児童が選べるようにしていた。
希望を保健室も把握していれば、普段は冷たい牛乳の子がホットミルクを頼むと、体調が悪いのではないかということがわかってくる。
子どもが避けがちな野菜を食べやすくする工夫に栄養教員や調理員のアイデアが光る。
福岡県で出会った具だくさんの汁物の郷土料理「だぶ」では、里芋を下ゆでしてぬめりを抑えることで、「子どものうちから里芋の味を知ってほしい」と調理員が語る。
給食は、郷土の味を知る大切な機会である。
おせち料理の定番である「なます」を家で食べたことのない子も多いので、給食のお正月献立は「紅白なます」で、おせち文化を伝える。(日経新聞)
良い食事、良い器から
福井県鯖江市河和田小学校では、平成12年から、給食に「越前漆器」を使っている。
「いただきます」の元気なあいさつとともに子どもたちの手が伸びるのは、上品な風合いをたたえた黒い茶碗だ。
「児童が伝統文化を知り、地域愛を深める機会になれば」という考えからである。(産経新聞)
漆器で給食 伝統味わう
和食の特徴的な道具の代表は、椀と箸だ。
器を手にし口をつけ、箸を使って食べる動作は、他の食文化にはない。
鯖江の河和田小学校では、食器類がぶつかるカチャカチャという音は聞こえない。
子どもたちは、黒塗りの伝統工芸品の越前漆器を丁寧に扱っている。
ここでは、和食の献立も多く、家庭科の時間には、魚をさばいたりコンブから「だし」を取って味噌汁を作ったりする。
国立民族学博物館の熊倉功夫さんは「日本は森林が豊かで漆も自生する。漆器は自前で作れる実用的な食器だった。木の特有の柔らかさも日本人の皮膚感に合う」という。(読売新聞)
未利用魚と呼ばせない
三菱総合研究所によると、日本では、漁獲水産物のうち32万トンが廃棄され、それはおよそ760万人分の消費量に相当するという。
福岡市の水産ベンチャー・ベンナーズの井口剛志さんは、2023年の3月から、東京渋谷区の私立学校に給食の食材として未利用魚の出荷を始め、9月には児童を前に日本ではなじみのないマトウダイをさばいてみせた。
給食食材の地産地消
学校給食で地産地消を進める動きが活発になっている。
東京都小平市では、「JA東京むさし」小平支店が直売所を集荷拠点にして、学校給食に地場産の食材を供給する。
地場産の割合は金額ベースで30%超えを達成した。
市も学校に助成し農業と教育の連携が奏功した。
また、給食に使われているという事実が、地域の農家が子どもたちの健康を思ってつくる「おいしくて安心・安全な食材」のブランドイメージにつながる。
島根県の「雲南市学校給食野菜生産グループ」は、「私は給食用野菜を作っています」というマークを作り、そのシールを貼って直売所でも販売している。
「有機給食」もブランド化の鍵となる。
給食向け有機栽培米の割合を100%にした千葉県のいすみ市は、「有機農業のまち」として定着した。(日本農業新聞)